小論文:過去問研究・講義及び模範解答:「アクティブ・ラーニング」(佐賀大学)

アクティブ・ラーニング (2016年3月実施・佐賀大学・後期試験・教育学部)

(本文略)

 

以上の文章を基にして、以下の2つの問いに、合わせて800字以内で答えなさい。

 

問1 上の文章を読んで、あなたはアクティブ・ラーニングをどのような学習法だと考えますか。溝上氏の見解にも着目しながら、あなたのアクティブ・ラーニングの捉え方を述べなさい。

 

問2 あなたが小・中学校の教員になったら、どのようなアクティブ・ラーニング型の授業を実施したいですか。表1・2の教育課程のおける教科それ以外の領域のうち、1つを選び、あなたが考える授業を具体的に述べなさい。その際、選択した小学校ないしは中学校の教科またはそれ以外の領域を明記しなさい。

 

問1

 

【解説】
設問に注意する。単に自分がアクティブ・ラーニングをどのようにとらえているかを述べるのではない。もちろんその点もとても大事であるが、問題文中に引用されている溝上氏の発言に注意する。「アクティブラーニングが行われるときも、講義形式の教育は否定されてはいけない」と述べている。アクティブラーニングは、ともすればこれまでの、教師からの一方的な知識詰め込み教育の反発から起こったと考え、知識伝達や基礎知識の構築をないがしろに考えがちであるが、アクティブラーニングにおいても、知識の習得・伝達は重要であると言っているのである。受験生は、この溝上氏の見解を否定して、解答を作成することは許されない。事故のアクティブラーニングの見解の中に溝上氏の見解をうまく入れ込むことができるかがポイントなる。

なお、溝上氏は、知識の伝達、つまり教師の講義の際に、教員の話を聞いている際に、児童・生徒が、こ「れまでの知識や経験とすり合わせて、新しい知識を位置づけたり、思考したり、感動したり、疑問を覚えたりする」そのような聞く姿勢を呼び覚ます、教師側の話す力量を求めている。この見解まで解答に盛り込むとしたら、この佐賀大の問題はかなりの難問となる。

 

【解答例】
アクティブ・ラーニングとは、学修者である児童・生徒が、興味を持ったことについて主体的に学習に取り組むことだと考える。知識や情報を探すのも、主体的に行い、その過程において情報や知識の探し方そのものも身につけていく。そして得られた情報を整理して、他者に提示できるようまとめ、他者とも共有する。この全体の過程が、アクティブ・ラーニングであると考える。アクティブ・ラーニングに向いている教科や場面もあれば、向いていない教科や場面もある。場合によっては、教師が理解を導くための説明する講義型の授業も必要になる。教師の講義と、アクティブ・ラーニングをうまく接続し、児童・生徒の知的好奇心を次に向かわせるためには、講義の中で疑問や興味を持たせ、アクティブ・ラーニングで得られた知識や解決法が、全体の知識体系の中でどのように位置づけられるのかを示して、自主的な学習を進めるきっかけを与えることが教師には求められる。

 

問2

 

【解説】
自分が、将来教師になった時、どのようなアクティブ・ラーニングの授業を展開していきたいかそれを述べればよい。ただし、文科省のアクティブ・ラーニングに関する文書が問題には掲載されているので、まずこれをふまえなければならない。すなわちアクティブ・ラーニングのポイントは、「学修者の能動的な学修への参加を取り入れた授業」(アクティブ・ラーニングの場合は、「学修」と書くので注意)「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用能力の育成」「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれる」「教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク」

上述したアクティブ・ラーニングのポイントを満たしているのであれば、受験生は、どの教科を選んでもよい。もちろん、自分が一番興味がある、将来教師として専攻しようと思っている分野で書くとよい。

 

【解答例】
私は、小学校の総合学習の中で、ジャガイモ栽培を通して、植物が育つ条件を学び、さらには収穫したジャガイモを調理して食べるところまでを行いたい。児童をグループに分け、どのような条件でジャガイモを植えた時に、収穫量が多くなるかを考えさせる。その際グループで話し合いをしながらグループの意見を決める。予想を立てる中で、植物が育つ条件とは何かを考えなければならず、自発的に調べることにとつながっていく。そして、芽が出て葉が茂り花が咲くという過程を粘り強く観察していかねばならず、そういう苦労を経て収穫をするという喜びは貴重な体験になる。そこから、世の中を支えている農業生産者へと思いをはせることができるようになれるだろうし、生産・流通といった社会への仕組みへ、興味が発展すれば、グループごとに関連事項の調べ学習を深めていくこともできる。グループの成果を発表して、相互に学ぶこともできる。

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